<8月2日>(月)
○クリス・ネルソンの新しいレポートがウェッジのサイトで出ております。米中関係が風雲急を告げているけれども、日本政府はそれには全然追いつけていない。というよりも、菅政権は国内問題に忙殺されている。が、東南アジア諸国にとっては洒落にならない事態が起きている。中国は南シナ海のことを台湾やチベットと同じ「中核的利益」(Core Interest)と呼び始めた。「南沙諸島は中国のものである」という話は以前からあったけれども、ベトナム、フィリピンなどの南シナ海沿岸国にとって、これはただならぬ事態である。なんとなればネルソン氏いわく。
中核的な利益という言葉を中国が使うときその裏にあるのは、「解決するためには武力を使うことも辞さない」ということだ。米国、あるいは国連など外部機関による「介入」を、中国は一切拒むということも意味している。
○かかる動きに対し、ヒラリー・クリントン国務長官は雄々しくも中国に対して喧嘩を売って出た。ベトナムで行なわれたASEAN閣僚会議において、「米国は今、南沙諸島の紛争に直接的かつ積極的に関与する用意がある」という声明を発表したのである。さあ、大変。中国側は「アメリカは二国間の問題を国際化しようとしている」などと反撃に出た。そうでなくったって、アメリカは中国の助けを借りなければならない理由が山のようにある。イラン核開発、北朝鮮問題、人民元レート、貿易摩擦などである。
○ところがアメリカは韓国との合同演習を実施し、韓国の哨戒艦「天安」が沈没した事件は、北朝鮮の魚雷によるものであろう、との警告を発している。本当は事件が起きた黄海で実施すべきところ、少しだけ中国に譲って日本海で実施した。結果として竹島近海において、韓国海軍の旗艦「独島」とアメリカの空母「ジョージワシントン」が演習を行なうことになった。これは日本のソフトパワー外交の失点ともいえるところだが、かろうじて演習が行なわれたのは”Sea of Japan”であって”The East Sea”ではなかった、というのが日本外交にとっての救済といえようか。
○ともあれ、今やアメリカにとって北東アジアにおいてもっとも頼りになるのは韓国、ということになっている。米韓合同演習においては、米空軍の虎の子兵器であるところのF22が参加しており、これはアメリカがいかに本気かということを如実に示している。F22は嘉手納基地から飛んでいる。が、そこはステルス機であるから(?)、沖縄の貢献は目に見えないのである。再びネルソン氏いわく。
また、悲しいかな、これはオバマ大統領がトロントで開催されたG20サミットで韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領を温かく迎え、米国にとっては、米韓同盟がアジアの「リンチピン(Linchpin=安全保障の要)」だという考えを全世界に向けて宣言し、多くの観測筋を驚かせた理由でもある。これは冠詞が「the」の唯一のリンチピンであり、その相手は日本ではないのである。
我々はあるホワイトハウス高官に、オバマ大統領の言葉遣いは正確だったのか、そして熟慮されたものだったのかどうか尋ねてみた。すると、「そうだ、それがまさに大統領が話したことであり、意味していたことだ」との答えが返ってきた。
○ということで、日本外交のピンチである。北東アジア情勢においては、砲弾が飛び交うわけではないけれども、言葉を使ったソフトパワー外交が展開されている。ここでどうするか。ということで、明日に続く(予定である)。
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